上賀茂市でハンカチーフを買ったあと、
もうひとつ、ぴくんとなるお店のまえで立ち止まる
けっきょく市で立ち止まったのはこの二店だけであった
たっぷり入りそうな、おおらかなコーヒーカップや、ボックスクッキーのような柄のお皿
紅茶は繊細なカップでいただきたいが
コーヒーやら熱い牛乳やらは、がぶがぶ飲めるタイプでよばれたい
いまは真夏だけど、あと一、二か月でくるであろう秋の夜にしっくりきそうだ
と、いうふうに想いをめぐらせながら陶器をみていたが
お店のひとはお留守である
無人の店で想いをめぐらせていたのである
薄目で夢想するじぶんはちょっと馬鹿っぽいな、と気づく
ちょうどおひるどき、きっとお昼食の手配に行っておられるのだろう
したら、ぱたぱたとかわいい女性が走ってこられて、留守をわびられた
まあ! 金髪のかわいい白人女子
流暢な日本語で、いろいろ説明してくだすった
卓上においてある名刺には、「 ニッシネン 」 さんと書いてあって
「 ~ネン 」 て、お名前にネンが付くということは北欧のかたですか? とたずねたら
はい、フィンランドです、とおっしゃった
やっぱりにらんだとおり!
とぼしい知識の中、F1の「ライコネン」とか、ジャンプの「ヤンネ・アホネン」の関連でにらむ
ニッシネンさんは、ほんとうにかわいい女の子で
「このあいだ里帰りしてきましたよー」 と朗らかにわらう彼女は
目の色も髪の色もわたしたちとはちがうけど、とても日本の女の子のようにみえた
とおいお国からこられてると思うと何かじんとくる
彼女はいろいろある市のなかでも、上賀茂市がいちばんお好きだそうだ
まえに小川のながれるきもちのいい場所に当たった、とよろこんでおられた
ニッシネンさん作の、すてきなぐるぐるカップとお皿を抱えて
良い気分で家にかえる